行かないで







「もも、遅いねー」
「うん」
「どこで油売ってんだろーねー」
「……うん」
「うち、探してくる」


みやは短めのスカートを翻して、ぱたぱたと廊下を走っていく。
あたし、ももの居場所知ってるよ。
そう言おうとした唇は何故か震えて、言葉を吐き出すことが出来なかった。
遠くなっていきそうな背中を追いかけて、みやのジャケットの裾を掴む。


「愛理?」
「待ってようよ、ここで」
「けど、もう時間ないし」
「大丈夫。…だと、思う」
「え?」
「もも、きっとすぐ戻ってくるよ」


ぐいっとジャケットを引っ張ると、みやは何も言わずにあたしの後についてきた。
普段ならこんな強引なことはしない。
いつだってあたしは、みやとももの間に挟まれて大人しい良い子を演じてた。
二人が言い合いを始めてもあたしは傍観してるだけで、止めようともしないしただ
にこにこ笑ってるだけの存在。

みやが何処かへ行ってしまわないように。
ももを探しに行ってしまわないように、あたしは掴んだみやの右手をきゅっと握る。


「…愛理?」
「ももがどこにいるか、知りたい?」
「愛理、知ってるの?知ってるなら、教えてよ」
舞美ちゃんと一緒にいる、はず」


その名前を口に出すと、みやと繋がっていたあたしの手を振り払われる。
そんなに強くされたわけじゃない。
けど、自由になった左手の行き場に困って、スカートに冷えた手をごしごしと擦りつけた。


「みやは、そんなにももが良いの?」
「…別に、そういうわけじゃない」
「うそ。ももが舞美ちゃんと何してるか、気になってるでしょ?」


知ってるよ。みやが、もものこと好きなんだって。


「…愛理には、関係ないよ」
「そうだけど。でも、あたし」
「……何?」


こんなところで、言うべき事じゃないのかもしれないけど。
早くしなきゃ、みやはもものところに行っちゃうから。あたしに引き止める権利なんてないから。
誰もいない廊下の真ん中で、ただももが早く戻ってくることを願う。
泣きそうなみやの瞳に映ってるのは、あたしじゃなくてきっとももなんだ。

ももが早く戻ってきて欲しいと思う反面、このままずっとみやと二人だったらいいな、なんて。
ももの隣には舞美ちゃんがいて、そこに誰かが割って入ることは許されない。
同じように、みやがももを思う気持ちを、あたしが邪魔しちゃいけない。


けど
邪魔したくなるよ。みやが見てるのは、ももだけだって分かってても。


「あたし、みやが好き」


ぽろぽろと頬を伝う涙は床へ落ちて、みやの顔を曇らせる。
どうしていいか分からないけど。みやに、行かないでよって伝えることしか出来ない。
















































続かないよ!w
思いつきでカタカタ