通学ベクトル−3



雨が降った日は愛理にとって特別な日。先輩と一緒に帰れる日だった。
今日も部室の前で待ち合わせをして、気休め程度に窓を見て前髪や身なりを整える。
ふと違和感を覚えて後を振り向くと、そこにいたのは愛理が何度か目にしたことのある人物だった。
名前は知らない。しかし、向こうは愛理のことを知っている様子だった。



「愛理ちゃん、だよね?」



思った通りだった。少し高い声色に驚いたが、胸元のバッジは黄色。
愛理のひとつ上、高等部の一年生であることは確かだった。
愛理は小さく頷いて、傘の柄をぎゅっと握る。



「やっぱりそうだ。みぃたんの後輩ちゃん」
「…みぃたん、って」
「そうそう、今愛理ちゃんが待ってる人のことね。もうすぐ来ると思うよ、みぃたん」



聞き慣れないそのあだ名は、どうやら先輩のことを指しているらしい。
特徴的な笑い声が可愛らしく、髪をストレートにおろしたその風貌は先輩によく似ていた。
ジャージの名前欄には「中島」とある。
愛理の思い違いでない限り、先輩によく似たこの人物は陸上部のマネージャーだ。



「仲良いんだね、みぃたんと」
「いえ、仲良いってわけじゃ…たぶん」
「見てれば分かるよ。愛理ちゃん、健気だなーと思って」
「健気?」
「ロマンチックじゃん。雨の日だけ、好きな人の帰りを待ってるっていうのが」



その言葉に、落ち着いていた心臓の音がどくんと高鳴る。
冷えた手のひらを頬に押し付けて、愛理はぶんぶんと首を横に振る。
反射的にそうしたけれど、嘘をつくのはめっぽう苦手だった。



「じゃあ、ライバルだね」
「え?」
「早貴と、愛理ちゃん」



雨は激しさを増す。雨音に紛れて聞こえた言葉に、愛理は耳を疑った。
すぐ近くで、先輩が愛理を呼ぶ声が聞こえる。夢の中にいるような気分だった。










































ノソ*^ o゚)<初登場だケロ


桃子とんkskどっちにしようか迷いました