通学ベクトル





冷たい冬の風と共に、一粒の雨が愛理の頬をうちつける。
空を見上げるとどんよりと曇った空から次々と雨が降り注ぎ、あっというまに
アスファルトを黒々とした色に変えていく。
朝の天気予報はしっかりチェックしたのに、予報は見事外れてしまったようだ。
折り畳み傘くらいカバンに入れておけば良かったと後悔するが、昼間はあんなに晴れていたの
だから、雨が降るなんて思ってもいなかった。

ローファーの中もぐしょぐしょと濡れ始め、言いようのない不快感が両足に広がる。
段々と冷えていく体に打ち付ける雨は激しさを増し、新しくおろしたばかりのローファー
も水たまりにつかって汚れていく。

「あー、もぉー…」

誰もいないと思っていた薄暗い帰り道。
思わず漏らした愛理の独り言は、誰かの笑い声に掬われた。


振り向くと、そこにいたのは愛理と同じ制服を身に着けた学生だった。
何故か目を細めて楽しそうに笑っている。途端に恥ずかしくなって、俯き加減になり
濡れた前髪を押さえた。



「傘、ないの?」
「…え?」



分かりきったことを聞かれて、前髪を押さえながら愛理はぽかんと口を開ける。
ビニール傘を差して水たまりを飛び越えて来るや否や、愛理に降り注いでいた雨が止む。



「これ、使って」



胸元のバッジは赤色。ということは、3年生に違いなかった。
差し出されたビニール傘を言われるがままに取っ手を握る。そこではっとした。



「や、大丈夫です!家、すぐそこですから」
「大丈夫に見えないから、これ貸すんだけどなぁ。いいからいいから」
「でも…」
「じゃ、気をつけてね」



少し背の高いその先輩は、傘を愛理に託して雨の道を走っていく。
愛理はプラスチックの取っ手をぎゅっと握ったまま、その姿が曲がり角に消えるまで呆然と立ち尽くしていた。

猛スピードで消えて行ったのだから、後を追いかけるのは愛理の足では到底無理な事だった。
たいがい運動は苦手で、運動会では後から数えたほうが早いくらいの鈍足である。
しばらくすると、ビニール傘のおかげで幾分寒さを感じなくなった気がした。



「…名前、聞くの忘れちゃった」



同じ学校だから、探そうと思えばすぐに見つかるだろう。けれど、時間がかかりそうだ。
なるべく早くこの傘を返したい。なるべく早く、あの人にまた会いたい。
冷たかったはずの手や頬は何故だかぽかぽかとして、あたたかくなっていた。




























通学っていうか下校だよねこれ。ごめんなさい適当につけました。
雨の中をガーッと走って行ったのは誰なのか!そこのやじすずヲタのあなたならピンとキタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━?
矢島は傘ささずにカッパ着てはしゃいでればいいと思います。

州*´・ v ・)<続かないよ




愛理ちゃんがそう言ってるので続きませんよニヤニヤ