はじめて、だから


「愛理」



どうしていいか分からなかったのは、最初だけで。
近付いてくる唇に合わせて目を閉じれば、優しい手のひらがあたしの髪を撫でてくれる。
名前を呼ばれて伏せていた目を開けると、舞美ちゃんが肩のあたりにぐりぐりと額を
押しつけてきた。
何回か軽くキスを交わしたあと、舞美ちゃんは必ずあたしの名前を呼ぶ。


なにがあるわけでもないのに、やたら嬉しそうな顔をして、目を細めるその顔が大好きで。
きっと、あたし以外にこんな無防備な所は見せないんだと思う。
あったかい体がぎゅっとしがみついてきて、自然と笑みがこぼれる。
苦しくて、きつく抱きしめてくる舞美ちゃんの背中を叩くと、あたしの瞳を覗き込むように
して顎のラインを指でなぞられる。


指が頬を辿って、くすぐったさからぎゅっと目を瞑る。
もう一度目を開けると、舞美ちゃんの顔はあたしの首元に埋まっていた。
舌先が喉元を這う感触に嫌でも体が震えて身を捩ると、がばっと顔を上げた舞美ちゃん
にぎゅうっと抱きしめられる。


「…どーしよ、愛理」
「ふぇ?」
「我慢、出来なくなりそう」


そう言われて重なった唇の感触に酔いしれていると、あたしのおなかのあたりで舞美ちゃん
手がそわそわと動くのが分かった。
ブラウスとシーツが擦れ合う音と深くなっていくキスに堪えられなくて、素肌に触れてくる
手を強く掴む。
恥ずかしくて、見られたくなくて、その手を払おうと思ってもそれ以上のことは出来なかった。


「すきだよ、愛理」


あたしには手の届かない人だと思ってた。
けど、今はこんなに近くで舞美ちゃんを感じることが出来る。



お願いだから。
全部、あたしだけにして。触れてくる手も、視線も。









































仕事終わりとかに矢島は愛理ちゃんをお持ち帰りしちゃえばいいんだようん
結局続きにはならなかったけど、これで勘弁してくれる☆カナ